饂飩と餅と鍋

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zoom RSS 「ある便利屋の物語」 1

<<   作成日時 : 2011/03/24 17:58   >>

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お待たせしました。

まだ序盤ですが、とりあえず公開しておきます。
もしかしたらPCの口調や一人称などが違うかもしれません。違ったら遠慮なくご報告下さい。
(4/1 OP部分を追加しました)



●注意
以下、Asura Fantasy Online(http://afo.wtrpg.com/)のパロディです。
既に終了しているコンテンツですが、あくまでパロディです。

・PCが多少オーバー気味かもしれません
・PCがプレイングに書いていないような事をやっています
・グラントがおかしいです

以上を念頭に、以下をどうぞ
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 世の中には、ありとあらゆる仕事があるもんだ。
 仕事をする奴がいて、それを受ける客が居て、それで初めて人様の役に立ってるってわけだ。
 そりゃあ仕事って言っても色々だ。客が1人でも居りゃあ、そいつは立派な仕事だが、大勢を救うような仕事もあれば、胡散臭い仕事もある。けど、仕事をした結果を受け取る奴が居る以上、どんなちっぽけな仕事だって、立派な仕事なのさ。
 だけどな。どうせ自分の力を篭めてやるんだったら。人に感謝される仕事をやりな。
 それが。
 お前の一生を賭けた仕事になるなら、尚更だ。


 その町の名は、オランジュと言った。
 緩やかな勾配に面して作られた町の西側には、広大な畑と果樹園が広がっている。遠くに見える山脈に陽が落ちる頃、西の空に広がる橙と同等に美しい光景が、辺りに広がるのだ。その光り輝く大地の様を旅人達が『奇跡』と呼んだのも昔の話。今尚美しい光景ではあるが、比較的穏やかな平和を取り戻したこの世にあって、この程度の美しさなどゴマンとあるのである。
「じいちゃん、しっかり・・・」
 緩やかな坂道を、ゆったりとした速度で驢馬が進んでいた。驢馬には荷車が括り付けてあって、程度の良くない木製の車輪が、時折小石を踏み歪んだ音を立てて進んでいる。その荷車の上には年老いた男が1人。荷物に紛れるようにして倒れこんでいる。
「オランジュに着いたら、きっと薬師も居るし、うまく行ったら神父様も居て、治して下さる。だからそれまで頑張って」
 驢馬の横で荷車の持ち手に手を掛けながら、青年が1人。時折年老いた男を振り返り声を掛けつつ歩いていた。
「だって・・・なぁ・・・じいちゃん、夢だったんだろ・・・? 町で便利屋開くの・・・。後少しで町なんだ。俺も一緒に頑張るから・・・」
 ぎしぎしと軋む音がした。視界に広がる町並みは、急ぐ気持ちよりも遥かに遅く、青年の前にじりじりと近付いている。
 寒風が時折吹く丘陵の上を覆うのは、澄んだ空気と薄色の青空。
 どこにでもある、ありきたりな1日の一幕を、彼らはゆっくりと進んで行った。


 町の片隅に、一軒の貸家があった。
「おう、グラント。遅かったじゃねぇか」
 戸口の前で梯子を架け、男が1人その上に跨っていた。ガラガラと音を立ててやって来た驢馬付荷車に気付き、振り返る。
「後はこの看板を掛けるだけ・・・おい、じいさんどうしたんだ?」
「教会で診て貰ってる。神父様は、もう歳だから店やるなんて無理だろう、って言ってた」
「おいおい・・・じゃ、これどーすんだ?」
 梯子から飛び降り、男は肩に載せていた看板を右手で指した。
「・・・これは、じいちゃんの夢だ。じいちゃんの夢を叶えるのは、俺の夢。そしてこの店は、誰かの夢を叶えるんだと思う。ゼビーも協力してくれるんだろう?」
「俺はただの大工だぞ。お前がやろうって言う『便利屋』は、他と違うんだろ」
「うん」
 家を見上げ、青年・・・グラントは、大きく頷く。
「『便利魔法屋』だ」


 便利屋。
 様々な事を行う仕事だが、彼が目指していたのは、魔法を使えない人に魔法の便利さを利用して貰う事であった。例えば、火を熾すのはそれなりに時間が掛かるものだが、魔法を使えば即座に炎を点す事が出来る。ボートが風の流れで動く程度の風を魔法で起こすには、かなりの力量が必要だろうが、グラントが目指したのは町の人々の生活に根差した店である。
 彼の中には、祖父の言葉が強く根を張っていた。
 それが例え理想に過ぎなかったとしても、いつかは人の夢を叶える店にしたい。
 その為には。
「・・・まず、誰か雇わないとなぁ・・・」
 安い賃金でも働いてくれる人を見つけるのは一苦労だが、自分1人でやり遂げる事は出来ない。彼には協力者が必要だった。

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●大所帯の家
 便利魔法屋の看板が掛けられた家は、町の西区域にあった。元々は武具を売っていた店舗圏自宅だったそうだが、平和な世の中を取り戻したこの世界にあって、こんな田舎の町では売上は下降するばかりだったのだろう。半年前に出て行って空き家になっていた場所だった。
 店舗のすぐ裏手は鍛冶場の跡が残っている。古い竃や道具はそのまま置かれ、重い鉄製の器が中央に転がっていた。器だけは躓くと危ないのでゼビーに運んでもらい、後はそのままにしておく。道具は長年手入れもされずにいたようで錆付いていた事から、以前の家主が自分で鉄を打たなかった事が分かる。客が持ってきた家庭用ナイフなどの研ぎ直しくらいはしただろうが、せっかくの場所が長年使われていなかった事を、グラントは少し寂しく思った。
 鍛冶場を抜けた先には自宅がある。とは言え、1家族が住むには広い建物だった。恐らくこれも昔、鍛冶場で働いていた者たちが住んでいた名残なのだろう。多くの弟子を取っていたのかもしれない。2階建ての建物には個室が6つあり、大き目の調理場と、その隣に大き目の部屋が1室あった。今はがらんとしているが、昔はきっとそこで皆で食事を取っていたのだろう。窓を開ければ裏通りから小さな広場が見えた。子供達がはしゃぐ声、吟遊詩人達が奏で歌いながら歩く音が聞こえてくる。
「じいさん、何でこんなでかいとこにしたんだろーな?」
 窓から外を眺めるグラントに、ゼビーが問いかけた。
「きっと・・・賑やかで居たかったんだよ」
 もしかしたら弟子でも取って、大勢で暮らしたかったのかもしれない。簡単に想像できる光景だ。グラントも賑やかな事は好きだった。
「じゃ、じいさんが帰ってきた時に沢山で出迎えてやれるようにしとかないとな」
「そうしたいね」
 この建物には風呂まで完備されていた。鍛冶場で沸き上がる蒸気を利用したタイプだ。パン屋の2階などが近所の風呂屋になる・・・それと同じ造りである。鍛冶場に火を入れる事は無いから、今はまだ使えそうにない。
「風呂入りたいなら、俺ん家の隣が開放してるぜ?女は昼で男は夜」
「酒場に行った帰りに行きたいな。昔住んでた所に新しく大きな風呂が出来てさ。ヒノキ風呂なんだって言ってた。猫を連れて入ったら怒られたけど。あれ以来風呂には目がなくて・・・」
 やがて2人は昔話に花を咲かせながら、広すぎる家を出て酒場へと歩いていった。

●シルフィン・マックスハート
「あぁ・・・お腹が空きました・・・」
 ぐーきゅるる。
 酒場の片隅で、シルフィンは片頬をテーブルの上に乗せていた。年頃の女性の腹から虫が鳴っている様は大変恥ずかしい。だがもうそんな事も言っていられない、危機的状況である。人を探し続けて此処まで来たが、ここに辿り着くまでに路銀も尽きていた。白魔法を駆使する聖職者であるから、教会に行って奉仕活動をしながら衣食住の提供を受ければ良いのだが、それではなかなか路銀も貯まらない。路銀が貯まらなければ、旅は続けられないのだ。何か、仕事を探さねば。
 一見お嬢様風の品の良さが見え隠れする娘が、さらさらと流れ落ちる金の髪もそのままにぴくりとも動かぬ様に、傍を通り行く人は怪訝そうな表情を見せながらひそひそと話している。それにぴくりと反応して、娘はバンダナがきちんと耳の上に当たっているかどうか手を動かし確認した。・・・大丈夫。見えていない。それから、人が眺めている壁の一角へと目を移した。数人が壁に貼られた紙を見やりながら何か会話し、去って行く。
 人が居なくなった所で、彼女は立ち上がってそちらへふらふらと歩み寄った。
「・・・『募集』」
 それは、募集板だった。人材募集もあれば、仕事募集もある。猫探し依頼なども載っていた。冒険者ギルドの派出所でもあっただろうかと思っていたシルフィンは、それを見て納得する。町の中での情報交換の場にもなっているのだろう。猫探し依頼の紙には依頼人とは違う筆跡で、スミスさんの家で見かけたと書かれてある。それを見て少し嬉しくなりながら、シルフィンは目当ての用件を探した。
 間も無く、それは見つかった。
『魔術師募集』
 自分のような者が雇って貰えるかは分からない。だが、動く事に躊躇いは無かった。
 もう、2日も何も食べていないのだから。

●パール・エスタナトレーヒ
「しっふしふ〜♪」
 ぱたぱたと羽音がして、明るい声がシルフィンを出迎える。
「何かご依頼でしょうか〜?」
「あ・・・店長さんでしょうか?」
「違いますよ〜」
 間延びした口調で答える娘はシフールだ。鮮やかな色合いの羽を背に持ち、それを懸命に動かして飛んでいる。・・・懸命に動かしているように見えるのは、別に彼女だけではない。全てのシフールは懸命に羽を動かして飛んでいるが、当の本人たちにはその自覚が無かったから、他種族が思うほど大変な動きではないのだろう。かと言って背中の筋肉が発達しているようでもない、不思議な種族である。
「店長にご用ですか〜?」
「はい。面接に」
「分かりましたですよ〜」
 ぱたぱたぱた。シフールの娘は奥へと引っ込んで行った。途中で暖簾に羽を引っ掛けてもがいているのを見てしまったが、シルフィンは見なかったフリをする。人の失敗を笑ってはいけないのだ。
「店長、店長〜」
「あぁ、パールさん。お客様だった?」
「いえ〜。店員希望の人みたいです〜」
「今日は2人目だね。有難う。・・・あ、パールさん、この衣装なんだけど・・・」
「ちょっとご遠慮願いたいのです〜」
 ぴゅーっとパールは奥へと逃げていった。ちくちく衣装を縫っていたグラントは、橙の生地に黒いレースがふんだんにあしらわれた小さなドレスを置き、店舗へと入る。裾丈を確かめたかったグラントだったが、パールにしてみれば聖職者がそんなひらひらした派手な格好をするのは如何なものか。と言う所だ。とは言え、店長がシフールである彼女のサイズに合わせてわざわざ作っているのだから、無碍に断るのも悪い気もする。
 思い返せば、この店に最初の面接に来たのは、パールだった。
 酒場で依頼を見つけて、そのままその羽でこのでかい建物にやって来たのだ。
「え・・・君が、店員希望・・・?え・・・?」
 きょとんとしたグラントに向かって、パールは幾つか魔法を見せたものだった。とは言え・・・彼女の魔法は、目に見えて効果があるというのを具体的にその場で示すのは難しいものばかりなのだが。だが黒教会の聖職者である事を伝えると、逆にグラントは笑顔を見せた。
「驚いたよ・・・。シフールと言うと、郵便屋ばかり見るから」
「シフールも色々なのです〜。ボクは聖職者ですから、そういう観点からもお役立ちだと思うのですよ〜」
「あぁ・・・そうか。人々の悩みを救う職業の多くは聖職者だね」
「魔法を使わなくても解決できる事もあると思うのです〜。そういう依頼のお手伝いも出来ればいいのですけれど〜」
「そうだな。魔法の便利さを人々に広く活用して欲しくて作った店だけど、魔法の快適さばかりに馴染んで自分で努力を怠ったら駄目だね」
「そうなのですよ〜」
 と言うわけで、その日の内に店員になったパールなのである。
 ひっそりとテーブルに置かれたドレスを眺め、パールは意を決したようにそれへと近付いた。そのまま、大きな針を手にしてドレスの背中へと針を通す。彼女には裁縫の技量などないが、もしもそれを着る事になるならば・・・付けておきたい印があった。そう、黒教会の紋章である。
「・・・難しいのです〜」
 うっかり表裏を縫い合わせてしまったりしつつ、彼女は四苦八苦を繰り返した。

●エレェナ・ヴルーベリ
 翌昼。
 エレェナは店を見上げていた。想像していたよりも遥かに大きな建物だ。
「シルフィンさ〜ん。あったよ〜」
 不意に道路側・・・つまり、店の玄関側、エレェナが立っている真上の窓が開き、男が身を乗り出した。
「って・・・あれ?」
「どうも」
「あれ?お客さ・・・わぁぁああっ」
 そして、落ちそうになった。
「店長さんー!?」
 丁度店の横手を掃除していた娘が、その声に持っていた箒を滑らせ落とす。慌てて立てかけてあった梯子を持って運ぼうとした。それを手伝うように手を掛けると、娘は丁寧にお辞儀をする。
「どなたか存じませんが、有難うございます」
「店長落ちちゃいますよ〜〜」
「あぁぁぁ・・ごめんなさいっ」
 見上げると、窓枠に両手を掛けてぶら下がっている男と、それを引っ張るようにしているシフールが居る。シフールではどう考えても支えるのは無理だ。2人で梯子を男の下に掛けると、男はそこに足を置いて大きく息を吐いた。
「店長、意外とおっちょこちょいなのです〜」
「ほんと、ごめん。何だか浮かれてしまって・・・」
「運んで下さって有難うございます。ごめんなさい、お客様。騒がしくしてしまいましたが、魔法はきちんと使えますので・・・」
 娘がにっこり微笑みフォローしたが、余りフォローになっていない気がエレェナはした。軽く首を振り、娘に微笑み返す。
「大丈夫だよ。私は店員希望で面接に来ただけだから」
「そうでしたか・・・。私はシルフィンと申します。ご一緒に働けると嬉しいですね」
 実は昨日まで青白い顔をしていたシルフィンは、すっかり赤みを取り戻した肌に春風のような笑みを乗せ、微笑んでいた。それへと爽やかな麗人に見える格好をしたエレェナが笑んで立っている姿は、何やら芸人達が披露する劇の一幕のようにも見える。
「店長、店長」
 ほけーっとした顔でそれを見ていたグラントは、背後からパールに突かれてはっと我に返った。
「すみません、助かりました。それで・・・面接、でしたか」
「『便利魔法屋』なんて面白い事を考えると思ってね。良かったら、雇ってくれないかな。月魔法なら若干使える」
「勿論、喜んで」
 多少堅い面接でもあるかと思っていたエレェナは、あっさり承諾されて目を細める。
「しふしふ〜。ボクはパールと言うです〜。よろしくですよ〜」
 ぱたぱたとパールが飛んできてくるりとエレェナの周囲を回った。
「何か懐かしいな、その挨拶」
 エレェナの笑みにパールも頷く。
「この町ではこの挨拶を聞いた事が無いのです〜」
「ここでも広まるといいね。私はエレェナだ。よろしく」
「はい。改めまして、よろしくお願いします」
 シルフィンとも握手を交わし、エレェナは黙って見ているグラントへと振り返った。
「それで?今はまだ閉店中?」
「今はシルフィンさんの提案で、掃除中なんだ。・・・あ、パールさん。そのエプロン汚れているから新しいのを」
「まだこのエプロンが使えるのでいいです〜〜」
 ぴゅーっとシフールは逃げていく。それを見送りながら、エレェナが箒を拾い上げた。それを受け取り丁寧にお辞儀したシルフィンは、エレェナの手に布を持たせる。
「半年間の埃をまずは落としてから。それから開店ですね」

●賑やかな界隈
 その通りには、元々殆ど店という店が存在しなかった。
 通りの中央には大きめの建物があって、昔昔は、そこを中心とした賑やかな音が、毎日響き渡っていた。
 人々の笑い声や怒声、子供の泣き声や騒ぐだけの声。皆で喜怒哀楽を分かち合った音が、その通りにこだましていた。
「懐かしいのぅ・・・」
 1人の老爺が、余り見えない目でその店を眺める。
「看板、綺麗になりましたか〜?」
「はい。毎日磨きませんとね」
「パール、看板傾いてない?」
「少し傾いて見えるですね〜」
「戻そうか。・・・あぁ、それとシルフィン。梁に乗ろうとしない」
「ですけれど、壁も窓も床も梁もお掃除しませんと」
「落ちるから」
「高い所の掃除はボクに任せるですよ〜」
「はい。ではお願いしますね」
「あ、みんな〜。新しい、店員の衣装が出来たんだけ」
「店長はそんな事より先に掃除しなよ」
 遠い昔に見ていた輝きが、眩しさが、そこに見える。
 いつかこの通りにも、賑わいが戻ってくるかもしれない。
 老爺は頷きながら、散歩コースへと戻っていった。



(2へつづく)

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