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zoom RSS 2番手さんたちの物語

<<   作成日時 : 2015/06/17 19:47   >>

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「1番手キャラになりたいか〜〜〜!!!」
 広場の真ん中に台を置いた男が、唐突に叫んだ。叫びながら拳を突き上げている。
「君たちは、悔しくないのか! いつでも参加したいと思う依頼を後回しにされてしまわないか?!」
 叫ぶ男を、周囲に居た人々は遠巻きに眺めていた。だが、その中の1人の少年を、男はびしぃっと指さす。
「例えば君! 君は、お姉さん共々冒険者だね?! 君が『この依頼に参加したい…』と思ったときに、隣に居たお姉さんが『私、こっちの依頼に参加するわ!』とでも言わないかね?!」
「はぁ…それは、まぁ…たまにはありますけど…」
 少年の名は、ジルト。男の迫力に気おされるようにして思わず答えると、男は激しく首を縦に振った。
「そぉ〜〜だろぉともおおぉ!!」
「…」
 その動きにびくっとなりつつ後退したジルトは、自分の後方に立っていた娘にぶつかる。
「あ、すみません」
「いえ…」
 娘は苦笑を浮かべながら、その光景を眺めていた。だが当然のように、男はその娘…イリアにも指を向ける。
「そこの君はどうだね!? 例えば、君が欲しいと思っていた服があるとする。それは天使シリーズと呼ばれる、極めてレア度が高いシロモノだ。この広場の隣にある商店街に、時々スロットが出来る店があったな? あのスロットマシーンで一等が当たって…君は、憧れの天使シリーズを手に入れた。だが次の瞬間! 君の憧れの天使は、知り合いの手に渡ってしまったのだ! そう。君はそんなことは望んでいなかった。なのに! 突然! 君の手からそれは、するりと風のように抜けて飛んでいってしまったのだ! 君の手は勝手に、その知り合いに天使シリーズを渡してしまっていた! そんなことはないかね?」
「…あるわ…」
 男の具体例には覚えがあった。いや、覚えがあったというものじゃない。鮮明に覚えている。
 確かあれは、つい先月のことだ。装飾品が大好きな彼女は、いつも部屋にそれらを飾りつけ楽しんでいた。そしてその日も、スロットを回し…二等を当てたのだ。その時は『アクセサリー週間』で、当たれば様々なアクセサリーを手に入れることが出来た。ずっとずっと欲しいと思っていた、紫貝のピアスを選び、ほくほくしながら家に帰ったと言うのに…。
「そうよ…。あいつ、男じゃないの…。どうしてあんな男に私、渡してしまったの…」
「君はどうだね?!」
 うな垂れているイリアの横に立っていた青年に、男は目線と指を向けた。
「俺? 俺は別にないかなぁ…。ま、あんま依頼をがしがしこなすの好きじゃないしさぁ〜。そりゃ、ステータスが上がる装備が手に入れば嬉しいけど、別にそこまで高級品じゃなくてもなぁ」
「甘い!!!」
 だが男に鋭く指摘されて、青年…ガリウスは目を瞬く。
「それは一番手キャラの作戦だ! 1番手キャラの活躍のために、君は犠牲になったのだ! 君は元々そういう性格かね? 本当は色々やってみたかったんじゃないのか? 本当はどこにでも居る馬なんて引き連れずに、見た目も華やかなペガサスやドラゴンを飼いたかったのでは?! そして仲間うちで『いやぁ、うちのペットはドラゴンだから、ほんと餌が大変でさぁ』とか、自慢したかったのではないのかね?!」
「うっ…」
 ガリウスの脳裏に、あらゆる思いが走馬灯のように駆け巡った。
 そうだ。本当は自分は前線で戦って皆の盾として活躍したかったのではないのか…。なのにある日突然、気付いたら転職していて魔術師になっていて…。そしてあろうことか、日頃から生意気だと思っていた少女の依頼に駆り出されたりしてこき使われていなかったか…。本当は、白馬が欲しかったのに、『白馬は姫のものだよね?!』と、生意気な少女に奪われなかったか…。
「その『一番手キャラ』っていうのになれば…何か変わるって言うのか?」
 ガリウスには、イリアの嘆きもよく分かっていた。自分にも同じ経験がある。そしてイリアの傍で小さく頷くジルトの目にも、同じ色が宿っていることを見て取った。
「今の暮らしが…良くなるって言うのか?」
「良くなるとも! 一番手キャラというのは最早、神に愛された申し子に等しい! 一番手キャラを中心にこの世は廻るのだからな!」
「でも…。例えば僕が『一番手キャラ』というのになったら、こちらに居る人たちは、なれませんよね」
「なれるとも!」
「それは何故ですか…?」
「簡単な答えだ。君たちについている守護神は3人とも違う。守護神がもっとも愛する子供たちも皆違うのだ。だから、君たちはそれぞれの守護神の中で一番手キャラになればよいのだ!」
「でもどうやって…」
「それも簡単な答えだ」
 そして、男は大きく頷いた。
「活躍すればいい」


 男の話はこうだ。
「君たちが、君たちの一番手キャラをしのぐほど活躍すれば、守護神の目を引くことになる。そうすれば守護神の中にも迷いが出てくるのだ。迷いが出れば、『もしかしてこの子に力を注げばいいことあるかも…』と考えるようになる。それが狙い目だ!」
「守護神の『いいことあるかも』というのは一体…」
「守護神だって、守護神界では色々あるのだよ! 日々切磋琢磨し四苦八苦する守護神の苦労が報われれば、彼らも大喜びだ。即ちそれが『いいこと』だ!」
 と言われても、3人にはあまりよく分からない話ではあった。
「とにかく…。活躍すればいいのよね…」
 イリアが不安げに呟いたのは、『活躍する』という行為自体が非常にあいまいだからだ。
「でも、活躍というのは、どういう事を言うんでしょうか。僕達が『活躍した』と思って、守護神も同じようにそう思うものなのでしょうか」
 ジルトの言葉にガリウスは、う〜んと唸る。
「一番手とか二番手とか言われても、よく分からないしなぁ〜。あの男は、どうやってそれ見分けたんだ?」
「ですよね。何だか不気味ですよね。僕に姉がいることも知ってましたし…」
「あ…!」
 酒場の一角で話し合っていた3人だったが、ふとイリアが声を上げたので、ガリウスは期待に満ちた目で。ジルトは不思議そうな目で。彼女を見つめた。
「貴方の名前、ジルト君だったわよね。わぁぁ…貴方のお姉ちゃんのこと、知ってるかも」
「姉のことをですか?」
「そうなの。私、薬師なのだけど、よく一緒に冒険に行くことがあって…。えぇ。本当に貴方のお姉ちゃん、強くて優しくて素敵な人よね。私、尊敬してるのよ」
「はぁ…」
「それだ!!」
 バンとテーブルを叩き、ガリウスは勢いよく立ち上がった。椅子も同じ強さで後方にひっくり返る。
「強くて優しくて誰からも一目置かれれば、それが『活躍』だ!」
「…でもそんな事出来ていれば、はじめから、守護神の目を引けているわけですし…。僕達が『二番手キャラ』とかいう立場に居るのは、今ひとつな実力だからではないでしょうか…」
「う〜ん…それもそうか…」
 そのまま仕方なく腰を下ろしたガリウスは、盛大に床に尻餅をついた。
「でも…私の守護神の『一番手キャラ』は、特別強くはないわよ? レベルもまだ低いし、パーティとかお茶会とかピクニックとか、日常的な依頼ばかり受けているし…」
「よくご存知ですね。僕、姉が受けている依頼のこと、余りよく知らないです」
「さっき、調べてきたの。情報屋が、全ての冒険者の情報が保存してある場所を教えてくれたわ。あの男…男のくせに、画家に山ほど絵を描かせてたのね。…私だって、楽しかった誕生日会の絵とか、画家に描いてもらいたかった絵が沢山あるのに…」
 ぶるぶる。イリアが怒りのためか震えるのを、落ち着かせるようにジルトが肩をさすった。その下方で、ガリウスは盛大に打った腰をさすっている。
「知れば知るほど腹が立つわ…。何とかして、あの男の頭を抑えて、私が『一番手キャラ』に…」
「でも、特別人々の目に留まるような活躍をしていなくても『一番手キャラ』になるなら、対策が難しいですね…」
「俺の守護神のところは、もっととんでもないぞ。性格は極悪、他人のものは自分のもの、人を下僕としか思ってないような、顔だけが取り柄のガキだしな。あんなのの何が良いのか、さっぱり分からん」
「う〜ん…」
 3人は首を捻ってしばらく考えたが…。
「もしかして…違うのかもしれません」
 ふと、ジルトが呟くように言った。
「違う?」
「守護神によって、何を活躍と考えるのか違うのでは? 『一番手キャラ』は、守護神が望んでいるタイプの人物なのかもしれません。僕の守護神なら、強くて優しくて人々の噂になるような人物。イリアさんの守護神なら、日常的な中できらりと光る個性を持つ人物。ガリウスさんの守護神なら、とりあえず癖のある人物。…そういうことなのかも」
「成程…。だったら、それぞれ別の行動になるな。互いにがんばる、としか言いようがない…」
「いいえ」
 どこか諦めムードが漂った中、イリアは小さく首を振る。そこには、何か強い決意のような色が滲んでいた。
「私達全員で。一番手を勝ち取りましょう。その為には…一緒に行動しなくてはならないわ」
「何をする気なんだ?」
 その質問に、イリアは微笑む。


 まずはギルドに行く。
 そこで、3人が活躍できそうな依頼を提出する。
 3人が一番活躍できる分野ならば、もっとも輝けるはずだ。
 ガリウスが魔術師なのに戦士のように盾となって戦う一方で、ほのぼのとしたお茶会ではイリアが腕をふるって振舞う薬草料理が大評判。それらをしっかりとサポートするジルト。それぞれの個性が光を放ち、守護神の注意を惹くこと請け合いである。
 勿論、1回や2回で『一番手キャラ』に勝てるとは思わない。だが何回か続いた後にはきっと、守護神もこう思うに違いない。『この子をもっと活躍させてあげたいな』と。
 そう思わせるために、定期的に依頼をギルドに持っていかなくてはならない。なかなか大変な仕事だが、これも、『一番手キャラ』になるためだ。
 頑張ろう。3人は輝ける未来のために、頷きあった。


「おや…? 君は2番手キャラのジルト君じゃないか! 何を落ち込んでいるのだね?!」
 1ヵ月後。
 大仰な演説を熱弁していた男が、広場を通りかかった。
 かつて台が置かれていた場所に、今は椅子が置かれている。そしてその椅子には、少年が座り込んでいた。
「…いえ…」
「言ってみるがいい! 君の胸のつかえを!」
「…そうだよなぁ、と思って…」
「ん?!」
「『一番手キャラ』が最優先で依頼を受けているのに、僕達『二番手キャラ』が出した依頼を、僕達が受けれるわけないですよね…。どんなにサクラとか使っても、その依頼を僕達が受けなきゃ意味ないですよね…」
「ほほう?!」
「…僕達が出した依頼を、『一番手キャラ』が受けてたら元も子もないですよね…」
 はぁ、と大きくため息をついて。
 ジルトはぐったりと背もたれにもたれかかった。


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4000文字程度に抑えたため、盛り上がりには欠けます。
6000文字なら多分、転部分が書けた。

…実際にこういう依頼がWTで出るとどうなんだろうなぁ〜と思います。
PLさん全てが1番、2番、3番とキャラをきめているわけではないし贔屓度合いに差がない人もいるのは勿論知ってますが、こんなことはきっと貴方の周りでも起こっている!

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