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zoom RSS 『ある便利屋の物語 3』

<<   作成日時 : 2011/04/12 12:46   >>

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お待たせしました。3です。ラストです。

●注意
以下、Asura Fantasy Online(http://afo.wtrpg.com/)のパロディです。
既に終了しているコンテンツですが、あくまでパロディです。

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●アーシャのお願い
「あ。出来たら、白の教義に煩くない人がいいですね〜」
 椅子に座った娘は、出された茶を美味しそうに飲んでいた。ハーフエルフの特徴である耳が見えているが、特に気にしている風は無い。
「人探しで教義と何か関係があるのですか?」
「ん〜・・・私は見ての通りのハーフエルフですし、エルディンさんはあんな人ですし〜。こっそり内緒で遊びに行っているのかもしれませんし」
 彼女はアーシャと名乗り、依頼について説明をした。
 結婚して国を離れていたアーシャは、最近里帰りでこっちに帰ってきたのだが、彼女の父親のような存在であるエルディンという名の聖職者が、教会を離れて何処かへ行ってしまっているらしい。助祭の話では、『所用で出かけたんですが、そろそろ戻ってくるはずなのにまだ帰ってきて居ないのですよね』だとかで、もしかして事件に巻き込まれたのかも、と娘としては不安なようだった。最も、内緒で遊びに行っている可能性もあるわけで、そちらならば安心できるのだが。
「・・・そう。相変わらずだね」
「内緒で遊びに・・・ですか?」
「教会を預かっている身でこっそり遊びに行ったなら、ちょっと問題かもです〜」
「あの辺りは、まだ悪魔崇拝者が潜伏しているから、神父さんが狙われてもおかしくないのですよね〜。不安ですよ〜」
 不安だと言いながら、出された菓子をばくばく食べている。
「えぇと・・・一緒に探す、でしたね」
「もしかすると危ない事もあるかもなので、そーいう時はどかーんと戦える人がいいです。よろしくお願いします」
「どかんと・・・」
 シルフィンは、ちらと店員達へ目を向けた。誰もどかーんと戦えないわけでは無いだろうが、グラントも遠出は想定していなかったらしい。困ったように見ている。店員が1人欠けるだけでもそれなりの痛手だ。
「もちろん、経費は私が負担しますよ。人探しが得意な人。誰か居ませんか?」
「人探し・・・ね」
 その場に居る全員を敢えて見回し、エレェナが小さく息を吐く。
「・・・魔法で、と言うなら私だろうね」
「でも目星を付けてる場所があるんですよね〜?」
「ありますけど、お店が多いんですもん。すれ違ったりしたら困るし」
「商店街で、お買い物でもされているのでしょうか?」
「違いますよ〜。レスローシェって言う遊びの町があるんです。多分そこに」
 がたがたがた。カウンター奥の椅子が倒れる音がして、皆は一斉にそちらへ目をやった。先ほどまでそこに座っていたはずのグラントの姿が無い。
「大丈夫ですか?」
 すぐさまシルフィンが駆け寄り、床を這うようにして居住区のほうへ行こうとしているグラントを目撃した。
「だ・・・大丈夫大丈夫。こっちの事は気にしないで、お客さんの相手していて貰えるかな・・・?出来れば、とっとと出発して貰うような感じで・・・」
「はい?」
「はははは・・・よろしく頼んだ」
 ぱたん。扉が閉まった。
「・・・何かあったんでしょうかね〜」
 特に気にする風でもなくパールが言い、シルフィンも首を傾げる。
 エレェナのほうは、アーシャと日程及び旅行ルートの相談を始めていた。
「ムーンアローは便利な魔法ではあるけれども、探し物の際は用途を間違えるとそれ自体を破壊してしまう事もある。それでもいい?」
「エルディンさんは丈夫だから、ちょっとくらい平気だと思います〜」
「そうだね。達人で入れなければ大丈夫だろうね」
 本来、善良な人に向けてはいけない魔法ではある。まぁ、もしも遊んでおらず真面目に仕事をしているならば、謝ってから連絡を入れなかった不備に対して言えばいいし、端から遊んでいたならば、職務放棄の罰だとでも言っておけば良いのだ。わざわざこんな所まで相談に来た娘の気持ちを、親ならきっと汲んでくれる事だろう。
 そうして、2人は遠い町まで出かけて行った。

●ルイズからの至急の頼み
 探し物の依頼というのは一番多いものだ。
 失せ物、壊れた物、捨てられた物も含めて、人はよく探し物をする。物は人である場合もあるし、大切な宝物だったり、逆に、欲しいのに見つからない物だったりもする。そういう意味で、エレェナが長い間店を空けたのは結構な痛手だった。
「今、スリープを使える店員さんは出ているんですけれども・・・」
 頭を押さえている女性に精神を落ち着かせる効果のある香草茶を出しながら、シルフィンはそっと傍の椅子に腰掛ける。
「不眠には原因があると思います。例えば・・・心落ち着かない悩み、病、体調の不良。そう言った事はありませんか・・・?」
「それは、色々と・・・」
「私は聖職者です。貴女の秘密は絶対に護ります。もし宜しければ、ご相談に乗りますけれども・・・」
 その背を労わるように撫でながら、シルフィンはじっくり女性の話を聞いた。一つ一つの話に頷きながら聞き役に徹し、最終的に話が終わった所で、幾つかのアドバイスを出す。その上でメンタルリカバーを掛けると、女性は驚くほどすっきりしたと喜んだ。まだ眠れなかったら店員が戻り次第行かせますのでと伝えて送り出し、入れ替わりに帰ってきたパールを出迎える。
「・・・?どうしました?」
 既に、一緒に暮らし始めて半月が過ぎようとしていた。半月も暮らせば、相手の顔を見て多少の事は分かる。パールは、仕事をやり遂げると満足そうにしている事が多いから、今日も鼻歌交じりで帰ってきても可笑しくないと思っていたのだが。
「畑のほうは上手く行ったと思うのですけれども〜」
 パールは、畑の出来が悪くて困っている農夫の家へ行っていた。メタボリズムを使用して土壌を腐敗、発酵を促進させる効果を出し、後は様子を見て頑張って下さいと言い残して来たのだが、その帰り道・・・。
「山羊が・・・そうですか・・・」
 飼っている山羊が居ないと探し回っている少年に出会ったのだと言う。
「周囲は探してみたんですけど〜」
「それは・・・困り事ですね・・・」
 畑の事もそうだが、生活に根付いた仕事というのは、ほんの少しの不出来で彼らの生活に影響を及ぼす。下手を打てば数日後に食べていけるかも怪しくなる事があった。沢山の巨大な敵を倒してきた冒険者達からすれば些細な事だが、人々にとってみれば重大な事件である。聖職者の仕事は人の生活に根付いた部分もあったから、シルフィンもそれを思って考え込んだ。
「もう、夕方なんですよね〜・・・見つかるといいんですけど〜」
「お邪魔しますよ・・・っと」
 窓の方を眺めた2人の近くで、扉が不意に開いた。
「急ぎの頼みなんだけど、平気かい?」
 20代半ばと言った所だろうか。よく日に焼けた娘が、簡素な服に前掛けをつけた格好で入ってくる。その腹が大きく前に膨らんで見えるから、妊娠してもう結構経つのだろう。シルフィンが彼女の傍に椅子を運び、そこに座らせた。
「あたしはそこの先の牧場の者でね。ルイズって言うんだけど。・・・っても小さいトコなんだけどさ。カンボン牧場って言って、あたしと夫、それから牧童4人でやってて・・・あ、娘も1人居るんだけどね」
「あれ・・・?牧場です〜?」
「そうそう。それで、さっき山羊達が放牧から戻ってきてね。そしたら何処で逸れたのか、それとも放牧地に忘れて来たんだか、1匹数が合わなくてさ。ウチの人も牧童たちも手分けして探しに行ったんだけど、もう日も暮れるしね」
「あ〜・・・さっき、一緒に探したかもです〜。見つかりませんでしたけれども〜」
「あぁ、そうなのかい?それは有難うね」
「まだ、見つかっていないのですね・・・?」
 シルフィンの脳内に、高原の何処かで右往左往している山羊の姿が浮かぶ。
「それは可哀相です・・・。夜になったら見つける事も難しいですし」
「そうなんだよ。こう・・・魔法で、チョチョイと探せないもんかな?」
 100%言われるであろう台詞を予想していた2人は、少し困ったように首を振った。
「ムーンアローを使える店員が遠出して居るんです・・・」
「でもムーンアローで刺したら、山羊が怪我しちゃいますよね〜」
「そうですね・・・可哀相ですよね・・・」
「後から治しちゃえばいいんでしょ〜けど、山羊の精神的なケアとかも必要になってきますし〜」
「・・・あ。ムーンアローって確か、唯一の対象でなければ戻ってくるのですよね。もしも他に同じ立場の山羊が居たら・・・」
「だったら、探しに行く連中が安全に探せるようにして欲しいんだよね」
 ルイズの言葉に、2人は即座に頷いた。護衛ならば彼女達でも出来る。
「最近は聞かないけど、森から狼が流れてこないとも限らないし、途中に崖なんかもあるしさ」
「崖・・・ですか。日が沈んでからの探索は危険ですね」
「そうなんだよ。山羊に怪我させないように連れてきて欲しいけど、もし探し当てた時にどうにかなってたら、それは、まぁしょうがないよね」
「いいえ。死なせはしません」
 はっきりとシルフィンが言い、パールも頷いた。店奥から出てきたグラントには掻い摘んで説明をし、そのまま2人はルイズの指示に従って店を出て行く。
「・・・あ、そういう事なら魔法で居場所を・・・」
 周辺の地図を荷物入れから出したグラントだったが、その時には日も西に沈みかかり、既に周囲には誰も居なかった。

●山羊を探して
 西に見える峰へ、夕日が沈んで行く。
 まだ冬の彩り残る地上を照らし出す光も弱く、美しい茜色の絨毯を眼下に見る事は出来なかった。町がある丘陵を上がると、その奥には山脈へと繋がる森と山。そして、丘陵を降りた先に広がる川と幾つかの集落が見える。山へと続く道を、毎日牧童達は往復しているようだ。ならば可能性としては、この道中で逸れたか、放牧地で逸れたか、だろう。
「崖下、見てくるですね〜」
 まだ僅かでも日の光がある内に、パールが羽を通常より速く動かして崖下へと急降下した。崖下に広がる森の中に紛れてしまっていたら、探す事は極めて難しい。だがもしも崖から落ちていたならば、恐らく動けないだろう。
 結局、崖下にはそれらしき姿は無かった。道を進む内に、放牧地に探しに行って戻ってきた牧童の1人と出会う。彼は何も居なかったと告げたが、再度両脇の森を時折眺めながら、放牧地へと向かった。
「寒くなってきましたね・・・」
 着込んだ上着をしっかり合わせ、シルフィンがランタンに火を点ける。森の中に伸びる一本道を、仄かな明かりが照らし出した。
「夜は白い生き物は目立つのです〜。狼に見つかる前に急ぎたいです〜」
 シフール用のランタンを持って、パールが少し高い所へと飛び上がる。ゆらゆらと空中を、小さな光が、光の粒子を散らしながら飛んでいった。
 間も無く一行は放牧地に到着し、光の落ちた大地の上を探して回る。新芽が出たばかりの放牧地は、緑で埋まるほどではない。闇の中に白い山羊は見つからず、シルフィンとパールは森の中にも入って探し回った。夜の森はどこまでも深く、気を抜けば飲み込まれそうな闇がある。注意深く入ってきた方角を確認しながら冷たい土の上を歩いていたシルフィンの耳に、小さな悲鳴が聞こえた。
「・・・パールさん!」
 離れた所を飛んでいたパールが、ランタンを全方角へぐるりと回す。その視界に、白い物が見えた。真っ直ぐそこに飛んで降り立つ。
「こんな所に居たのですか〜」
 声を掛けて、動けなくなっている山羊の様子を見る。どうやら木の隆起した根元に脚を引っ掛けて倒れ、骨折したようだ。
「治して歩けるようになってから、一緒に帰ったほうがいいですね〜・・・あれ?シルフィンさん?」
 振り返ったパールの視界に、シルフィンが居ない。
 その頃シルフィンは、森の外へ向かって走っていた。彼女の耳は正確に、悲鳴が聞こえた方角を捉えていたのである。放牧地に牧童達を置いてきていた。そこで何かあったに違いない。何度か木の根に引っかかって躓きながらも森の外に出たシルフィンは、ランタンの光に映し出された光景を見た。
「・・・やめなさい!」
 森の中で拾った棒切れを片手に、牧童に襲い掛かろうとしている狼のほうへと走る。シルフィンとて戦えるわけでは無い。むしろ棒切れで戦えるような修練は積んでいない。だがこの場を何とか出来るような魔法は持っていなかったし、そうなれば自分の肉体を使って戦うしかない。迷う理由も無く彼女は飛び出したのだった。
 狼は複数居た。だがシルフィンの声と気配に目標を彼女へと変える。それへと棒切れを構えて睨みつけ、今まさに襲いかかろうと飛び上がった狼へとそれを振るおうとして・・・。
「・・・あ」
 不意に、狼が地面に落ちた。横方から走ってきた狼も、シルフィンに届く前に倒れる。1匹は彼女の棒切れに噛み付いたが、それもそのまま力を失い地面に伏した。
「・・・大丈夫?」
 目の前で炎に当たって狼が飛ばされる。炎は狼の全身を包むほどの勢いは無く火はすぐに消えたが、狼は森の中へと逃げていった。最後の狼が居なくなってようやく、シルフィンに声が掛かる。
「・・・エレェナさん。グラントさんも」
 ランタンの灯を当ててみれば、今倒れている狼は全て、眠っているだけのようだ。シルフィンはすぐに牧童達の手当てをして回った。特に心配するような怪我も無く、ほっと胸を撫で下ろす。
「それで、パールは?」
「・・・あ」
 一緒に来ていたつもりになっていたが、周囲に居ない事に初めて気付く。グラントは牧童達の所に残し、森の中に入って探索すると、間も無くして3人は合流する事が出来た。
「でも、山羊がこんな森の中に逃げ込むのも可笑しな話だね」
 傷を癒し、歩けるようになった山羊の両脇にエレェナとシルフィンが立ち、歩いて森を出る。空を見れば、もうすぐ夜中になろうかと言う時間だ。
「しかもあんな奥まで」
「どうして森の中に逃げたんでしょう〜」
「狼に追われたのでしょうか?」
「狼は森の中でも走れると思うよ。だったら今頃生きていないと思うけど・・・」
 ともあれ、皆は無事に帰還する。ルイズの牧場へ行くと、普段は寝ているであろう時間だが、夫と共に喜んで皆を出迎えた。温かいミルクを振る舞い、依頼料を支払う。
「山羊一頭よりは、安いよね?」
 高かったら本末転倒である。依頼料にチーズも付けてもらい、皆は店へと帰った。

●そうして店は
 その通りには、殆ど店が無い。
 通りの中心には、店の内容に対しては余りに大きすぎる建物があって、そこに4人の店員が働いていた。
 その店は、『魔法便利屋』。看板を見ただけでは、扉を開けようという気にはならない。けれども何時の間にか、その店には人が集まっていた。
 勿論、昔栄えた鍛冶屋のような賑わいはまだまだ無いけれども、何時かまた、この通りの中心となるのかもしれない。
「それで、見つかったのですか〜?」
「見つかったよ。本人は、仕事の一環と言っていたけれどね」
「見つかって良かったですね」
「後1日遅かったら、山羊を助けるのに間に合わなかった所だよ」
「本当に、助かりました。それと・・・エレェナさんがお出かけの間、エレェナさんにお願いしたい依頼が幾つか寄せられていまして・・・」
「過労で倒れない程度に、頑張って下さい〜」
「とりあえず、明日からでいいかな・・・?」
 3人の娘達を中心に、この店は回っている。魔法の傾向に多少偏りがあるが、グラントは充分満足だった。魔法だって、全てを補えるわけではない。人の力で補う事も大切なのだと彼女達を見てよく分かった。
「あぁ・・・グラント」
 眠りに就く前に、長旅から帰ってすぐに放牧地まで駆けて行く事になったエレェナが、多少ふらふらしながらもグラントに声を掛ける。
「おじいさんの所に、見舞いは行っている?」
「・・・時々は行ってるけど」
 祖父の容態が気にならないと言えば、嘘になる。けれども彼は願っていた。男なら、一度決めた事はやり通せ。それが口癖の祖父は、自分を気遣われる事を嫌っていたのだ。
「店の事は、店員達で割りとどうにかなると思う。だから、いつでもおじいさんの所に行くといい」
「それはそうなんだけど、俺が行ってもしょうがないって部分もあるし」
「夢だった店の、様子を聞かせてあげては、どう?きっと・・・」
 顔には出さないだろうけれども。
 きっと、喜ぶ。
「・・・そう、だね・・・。だったら今度、一度店を休みにしようか。半日だけでも。・・・じいちゃんに、皆を紹介したいんだ。出来ない仕事も色々あるけれど概ね順調で、俺はこの仕事を皆と続けて行きたい。そう、言いたいからさ」
 まだまだ始まったばかりの店だけれども。けれども、1人では難しいと思った、不安だと思った道行を、乗り越えられる予感があった。
 休みにするなら、何時がいいだろうか。とても天気の良い、暖かな日にしよう。祖父を囲んで談笑し、一緒に軽食を取ればいい。賑やかなのが好きな人だから、きっと、とても喜ぶ。
 その光景を想像に描き、きっと現実もそう遠くないだろうとグラントは思った。
 皆と、一緒なら。


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