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zoom RSS 「ある便利屋の物語 2」

<<   作成日時 : 2011/04/02 15:26   >>

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その2です。まだ続きます。


●注意
以下、Asura Fantasy Online(http://afo.wtrpg.com/)のパロディです。
既に終了しているコンテンツですが、あくまでパロディです。

・PCが独自の台詞を言っています

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●緑のある生活
 鉢に植えた花を、町外れに住む同族から貰った。開店祝いだそうで、見知らぬ町に越してきたばかりの一同にとっては、心和む話だ。
「淀んだ場所には何もこないから、風が縁を運んでくれるようにしてましょう。人を相手の客商売では、縁は何より大切です」
 受け取った花寄せを、シルフィンは店内の窓へと置いた。木窓の下と外に棚を作り、そこに鉢を並べておく。視界に草花が見える風景というのは、心落ち着くものだ。水を遣ってから床にも水を撒く。そのまま丁寧にブラシで擦っていると、心まで洗われるようだった。
 ハーフエルフとして生まれ育った事で、様々な迫害を受けた。今もハーフエルフを取り巻く環境は、さほど変わっていないようにも思える。だが、それに怒りを覚えるよりも哀しいと思う。こうして難なく雇って貰える事は、多くない。余り差別をしないのは冒険者くらいだ。
「探している人は、すぐに会える人でもありません。ですから途中で、仕事を投げ出して旅に出ることはありません。雇って頂けるのでしたら、お役に立てる間、ずっと置いて頂ければありがたいです」
 グラントに雇って欲しいと告げた時、全てを話した。だが、ハーフエルフである事を告げてもグラントが気に留めた様子は無く、今こうして、日々の掃除に勤しんでいる。清貧を善しとする教えを広める者として、神の慈愛を告げる者として。例えその愛が、ハーフエルフには他より少なく注がれているのだとしても。
「野草は店内に吊るそうか?」
「見た目にもいいと思います〜」
 ハーブティで客にお迎えのお持て成しを、というシルフィンの提案で、エレェナが野草や薬草を摘んできた。それを紐で縛り、パールが飛んで天井から吊るす。廃材でお客用の椅子を作るという話は、ゼビーが請け負って翌日には持ってきた。カウンターを運び入れて椅子とテーブルを並べると、のんびりお茶を飲むような場所のようにも見える。
「値段表は無いですか〜?」
 カウンター向こうでのんびりと裁縫をしていたグラントが、パールに声を掛けられて顔を上げた。
「あぁ・・・どうしよう。要るかな」
「目安は必要だと思うですよ〜」
「そうだねぇ・・・」
「それで店長は、今日は何処の掃除をしたのかな?」
 穏やかだがどこか凄味のある声音で、エレェナが優しく尋ねる。
「えーと・・・。あ、シーツを干したよ」
「掃除じゃないよね?」
 どうにも掃除となるとサボりがちなグラントを操縦するのは、何時の間にかエレェナの役目になっていた。
 既に、ここに暮らし始めて5日。ひっそりと開店して2日目になる。酒場などに開店の宣伝はしておいたが、未だ客は1人も来ていない。だからと言って掃除を怠ってはならないのである。シルフィン曰く、日々の行いが大切。
「じゃあボクは、看板の掃除をしてくるですよ〜」
「あ、外掃除ならこの衣装を・・・」
 ぴゅーっと窓から外に出て屋根へ向かおうとしたパールだったが、そこで危うく人にぶつかりそうになった。勿論、高さ的に人間達地上を歩く人ではない。
「わわっ」
 だが同族の空中軌道が自由気ままな事は、互いによく分かっている。くるりんと回って回避した後、パールはぺこりと頭を下げた。
「ごめんなさいです〜」
「しふしふ〜♪」
 この町では余り聞かれない挨拶が、相手の口から飛び出す。
「しっふしふ〜♪」
 当然のように挨拶し返して・・・。その、聞けない理由がシフールの数が絶対的に少ないからなのだが・・・それに思い当たって相手をまじまじと見つめた。
「なんでも屋っていうのは、ここ?」
 果たして。シフール族の少年はパールにそう尋ね返すと、背負っていた鞄の蓋を開いた。

●ジニの悩み
 初めてのお客様は、シフール族の少年だった。他族には今ひとつ年齢が読めないが、子供と大人の間・・・まさしく少年といった風情の格好である。
「おいら、ジニって言うんだけど・・・」
 シフール用の椅子など店内には存在しない。シフールのほうも慣れたもので、テーブルの上に座る事などよくある話だ。彼もカウンターに着地し、背負い袋を下ろして中からリュートを取り出した。シフールサイズであるから、実にかわいらしい大きさである。
「お茶、お茶・・・」
 湯を沸かしに行ったシルフィン以外の店員一同が、そのリュートを眺めた。
「これ、おいらのじいちゃんの形見なんだけど・・・なんか、音が変なんだよ」
 ぴろ〜ん。小さいリュートから高い音が鳴る。素人が聞いても首を傾げてしまうような音階が、店内にしばらく流れた。
「ほら。音、変だよね?」
「変だね」
 バードであるエレェナが真っ先に頷く。
「おいら、この先、吟遊詩人目指そうと思ってるんだけど・・・でも、相棒がこんなふうじゃちょっと悲しいから」
 ぺちとリュートの首を叩き、ジニは皆を見上げた。
「調律して貰おうと思って。お願いできるかな?」
「魔法で?」
「魔法で調律できる?」
「調律するのは構わないけれど」
 心無しかグラントが寂しそうなのは、魔法で解決する類の悩み事では無いからだろう。それを押し留めて、エレェナが小さなリュートを拾うようにそっと手に取った。
「・・・小さいから少しやりづらいけど・・・この程度のズレなら直せそうだね」
「本当!?」
 明るい表情に変わった少年に、丁度シルフィンが茶を淹れて持ってくる。カウンターでエレェナが直している間、皆はテーブル席へと移動した。少年は鞄から少しの硬貨を出してテーブルに並べる。
「森でキノコとか薬草とか採って、少しずつ貯めたんだよ。これで・・・足りる?」
「エレェナさん、調律ってこのくらいの値段かい?」
「店長に任せるよ。それよりも駆け出しなら、自分で調律を勉強したほうがいいね。シフールサイズの楽器を直すのは少し骨が折れるし」
 手持ちの道具を使ってカウンターで弦を引っ張っているエレェナが、顔も上げずにそう告げた。
「おいら、まだ駆け出しより前なんだよ。じいちゃんはけっこう知られた吟遊詩人だったらしいんだけど、父ちゃん母ちゃんが渋い顔して、なかなか教えてくれないんだ。でも、おいらもじいちゃんの血を引いてるなら、ゆくゆくはパリに出て、大きな舞台で演奏できるようになりたいんだよ」
「大きな志を持つ事は良い事だと思います」
「お父さん、お母さんは反対してるのです〜?」
「うん」
 シフールサイズの器はパールの分しか無かったのだが、予備で用意してあった器を引っ張り出して来てお茶を淹れてある。葉は鉢をくれた人が一緒にくれていたので、きちんと干されて強すぎない香り漂う香草茶になっていた。
「父ちゃん母ちゃんは、地道にシフ便の配達員をやれ、っていつも言ってて。おいらもそのつもりだったんだけど・・・あの相棒を見つけたのは、ついこの前なんだ。じいちゃんの使ってた道具の中から見つけた時は・・・すごく、わくわくしたんだよ」
「自分の行きたい道を行く事は止めないですけれども・・・ご両親とよく話し合ってからのほうがいいと思うのです〜。喧嘩別れになったら寂しいですから〜」
「・・・出来たよ」
 ジニの話に首を突っ込まずに居たエレェナが、軽く小さなリュートを爪弾く。2、3音を出して確認し、嬉しそうに飛んできたジニに渡した。ジニはしっかりそれを受け取り、弦を弾いてみる。
「本当だ・・・!凄いね。こんなに簡単に調律って出来るんだ」
「楽器を使って歌いたいなら、まず調律を覚えるといいよ。耳が良ければ僅かな狂いにも気付ける。まぁ・・・耳が良く無ければ、吟遊詩人をやっていくのも難しいけれどね」
「耳・・・?おいら、耳はどうかなぁ・・・」
「その子を相棒にするつもりなら、調律の基本は教えるよ。吟遊詩人になる事を止める気も薦める気もないけれども、音で人の心を癒し慰め楽しませるのがバード。自身の心の浮き沈みが音にも影響してくる。問題は抱え込まないほうがいいとだけ言っておくよ」
「うん・・・ありがとう」
 手を合わせてジニはエレェナに礼を言った。それから他の皆にも礼を言って回る。
 少年が今後どのような道を歩むかは少年の物語であるが、紆余曲折乗り越えて彼が夢を叶える日が来る。そんな日が、将来あるかもしれない。

●マリーズとリークの悩み
「あら・・・こちらが、何でも解決してくれるという便利屋さん?」
 翌日。少々高貴そうな女性が扉を開いてやって来た。どうやらジニが喜びを触れて回ってくれたらしい。ただ、『便利魔法屋』だったはずなのだが、何時の間にか『何でも解決屋』に言葉が入れ替わっている。
 彼女の名は、マリーズ。市井の商家に嫁いだが、生家は貴族の出なのだと言う。子供は3人居て、全員を塾に通わせているらしいのだが、どうやら2番目の息子が全く勉強をしないでおり、困っているらしい。
「勉強をなさらない理由はご存知でしょうか〜?」
 礼儀作法だけはきっちりと、語尾の間延びだけはどうしても直せないパールが、マリーズに尋ねた。だが首を振られる。
「原因となる事象、悩み等をお持ちなのかもしれません〜。まずはそこの解決を先に進め、その後に勉強のアドバイスや指導を行いたいと思うのですが〜」
「そうですね。集中力の問題でしたら、グッドラックを掛けて促したいとも思います。それから・・・成績を幾つか上げたら、もしくは達成できたらご褒美という飴を用意してみては如何でしょう?」
「えぇ。飴はたっぷりと用意しましたわ」
「たっぷり用意し過ぎてダメになっているのかもしれません〜」
 と言うわけで、パールとシルフィンはマリーズの自宅へと出かけた。丁度塾からの帰りらしい息子と会い、2人はじっくりと彼の自室で話しこむ事にする。
 最初は口の重かった息子だったが、ぽつぽつと話し始めた。話によると、彼は出来のいい長男と比較され、すっかり拗ねているらしい。どうせ家を継ぐのも長男だし自分はぷらぷら遊んでいたっていいだろうと言う12歳の少年に、2人は聖職者の立場も働いて、勉強する事、働く事、何かを為す事の大切さを説いた。
「良いですか〜?今はご両親に養ってもらっている身ですけれども、将来は自分で自分の身を養わなければならないのです〜。それが大人というものなのです〜。何かやりたい事があるならば、それを仕事にしても良いのですよ〜。遊ぶだけではいつか飽きてしまうのです〜。人は、何かを為さなければ退屈に思うものなのですよ〜」
「何か・・・って言ったら・・・夢、は・・・あるけれど」
「どんな夢です〜?」
「・・・笑うなよ?」
「どんな夢でも笑ったりしないのです〜」
「フェアリー。フェアリーと住める島があるらしいんだ。そこに行ってみたい。・・・詩人達の御伽噺にもあるだろ?フェアリーがいっぱい住んでる島があって、そこでは人もフェアリーも平等に一緒に暮らしてるって」
「フェアリーですか〜」
 冒険者には割りとお馴染みの生物だ。精霊には格があって、フェアリーと呼ばれる妖精達は、比較的下位の格付けである。だが中には変化してより強い精霊へと変わっていくものもいるのだが・・・。冒険者の中にはフェアリーと暮らす者も居るが、さすがに少年に冒険者への道を薦めるわけには行かなかった。
「御伽噺ですから、ボクも島が存在するかどうかは知らないのですが〜・・・フェアリーには属性があるのです〜。同じ属性の魔法を使えるとより仲良くなれるかもしれません〜。仲良くなれれば島の存在も教えてもらえるかもしれないのです〜」
「魔法っ・・・?!」
「魔法を習得するには、並ならぬ努力が必要です〜。魔術師は皆、日夜勉学に励んで、頑張っているのです〜。リークさんは、夢の為なら頑張れますか〜?」
「でも・・・勉強すれば誰でも魔術師になれるわけでは無いと思います。それでも大丈夫ですか・・・?」
「魔法なんて・・・俺でも使えるようになるのかな・・・?俺の周りじゃ、誰も使えないんだけど」
「努力次第だと思います〜」
「それに、魔法を教えてくれる先生も居ないし・・・」
「いきなり魔法を教えてもらっても習得は出来ないのです〜。まず、素養が必要なのです〜。勉強をきちんとして、下地を敷いて、それから上積みしていくのです〜」
 実際に2人が使えるのは聖職者魔法である。それは目に見えて効果を見せる場面が限定されており、今すぐに彼に見せるという事は出来ない。実際にシルフィンがグッドラックを掛けた所で、それを証明することなど出来ないのだ。だが彼女達がどのように自分は魔法を習得したか。神の力を借りる事と自然の力を借りる事と違いはあるが、どちらもその声を聞けるようになるまで自分を高める事が大切だという話をし、リークは俄然やる気を出したようだった。
「時々、様子を見に来ますね〜。勉強の仕方も教えますから〜」
「集中力が足りなくなったら、グッドラックを掛けに来ますね」
 そう言い残してから、2人はマリーズに全てを話す。案の定、マリーズは良い顔はしなかったが、現状、彼に魔法を教える師となるべき者がこの町には居ないであろう事を話し、最終的には彼女も納得した。マリーズとしてはリークにも商人、もしくは貴族の血を引いている者として、国に貢献できる仕事をして欲しいと考えているらしい。魔術師も充分貢献できますよ、とだけ伝えておいて、2人は家を後にした。
 度々様子を見に行く事になるだろうが、聖職者が教育を行う事をマリーズは歓迎している。彼も又、どんな将来を選ぶかは分からないが、夢を強い目的として頑張るならば、彼自身後悔するような生き方にはならないだろう。

●フェイブルの苦悩
 一方、2人がマリーズの家を出た頃・・・。
「あぁ、私はダメだ・・・もうダメだぁぁああ」
 テーブルに、1人の男が突っ伏して嘆いていた。
「もうおしまいだぁあああああ」
 この世の終わりみたいに嘆いていた。投げていた。
「納期は後何日?」
「・・・2日・・・」
 エレェナがカウンターから対応している。
「お弟子とかは取っていないの?」
「この仕事が私のたーにんぐぽいんとだったんだ・・・。これが終わったら、この仕事を認めて貰えたら、今後の私の画家人生に劇的な変化が・・・!」
「ふぅん・・・。それは、大変な事態だね」
「大変だろう!?」
 がばと起き上がった男の利き腕には、ぐるぐると布が巻かれていた。かなり膨れ上がった巻き方だった。丁寧に巻き直してあげても良かったのだが、男の言動が大仰なので、エレェナは様子を見ている。
「とにかく、手が折れたという事ならば、今は出払っているけれど神聖魔法の使い手達が居るから帰るまで待って・・・」
「おぉ、今すぐに会いに行こう!今すぐに!」
「だから、帰るまで待っ」
「あぁ、これで女神像が描ける!私の人生に明るい兆しが!」
「・・・女神『像』・・・」
「そうだとも!実に麗しい像があってね。女神を描いて欲しいという依頼があったから、これは転機になるだろうと」
 残念ながら読み間違っている気がする。とは言わずに、エレェナは頷いた。仮にこれを指摘した所で後2日。どうにかなる時間ではない。
「あ・・・お客様ですか?いらっしゃいませ」
 にこやかに微笑みながら、奥からシルフィンが出てきた。ぱたぱたとパールも現れる。
「丁度良かった。折れた腕を治して欲しいそうだよ」
「フェイブルと申す。よろしく頼むよ〜」
 画家の説明では、女神を描いて欲しいと頼まれて喜び勇んで女神像を描いていた所、モデルの女神像が台座から落ちそれを取ろうとして腕が折れたらしい。
「完成したら、作品見てみたいです」
 シルフィンがさっくりリカバーを掛けて癒し、飛び上がって喜ぶフェイブルにパールが女神像の事を指摘してみたが、彼は最早聞いていなかった。そのまま代金を置いて飛び出していく画家を見送りながら、シルフィンが呟く。
「・・・どうぞ気を付けて、今後の作品作りを」

●そして次のお客様
 翌日以降も、お客はやって来た。
 何でも魔法を使うのではなく、まずは魔法以外の方法で解決できるかを考える。今後も継続して利用して貰えるのが店としては有り難いのだろうが、彼女達は冒険者である。解決の手助けになれば幸い。後は自分達で出来る事はやって貰い、助けが必要ならば助ける。そうでなくては、人は堕落して行ってしまうだろう。
 始めは、そんなものかなと言っていたグラントも、色々考える所はあったようだ。時には4人の持つ魔法で解決できないような事もあったが、そんな時もフォローを忘れず対応した。
 そうこうする内に、1週間が経過した。
「あ〜、もう・・・。せっかく私が里帰りしたって言うのに・・・」
 ぶつぶつ言いながら、娘が1人、扉を開く。
 又、新たなお客がやって来たのだった。
 多少の厄介事を連れて。

(3へつづく)

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